「投資奨励法」

日本貿易振興機構(ジェトロ) バンコクセンター編

※本資料は日本企業及び日系企業への情報提供を目的に作成した仮訳であり、本資料の正確性についてジェトロが保証するものではありません。 本資料の利用に際しては、必ずタイ語原文に依拠いただくようお願いいたします。

日本語訳協力: Thai Keizai Publishing Co., Ltd.社

ジェトロ・バンコクセンター

投資奨励法

(仏暦二五四四年[西暦二〇〇一年]投資奨励法令までの内容を盛り込んだ現行の投資奨励法を訳出)

前文省略

第一条
本法令を「仏暦二五二〇年投資奨励法令(プララーチャバンヤット・ソンサーム・ガーンロントゥン)」と呼ぶ。
第二条
本法令は官報告示日の翌日から施行する。
第三条
以下を廃止する。
(一)仏暦二五〇一年一一月二九日付けの革命団布告第三一号、及び
(二)仏暦二五一五年一〇月八日付けの革命団布告第二二七号
本法令に規定のある部分について他の法律、規則、規約がある、もしくは相反矛盾している場合は本法令を使用する。
第四条
本法令において、
「奨励申請者(プー・コーラップ・ガーンソンサーム)」とは、本法令に基づき投資奨励措置を申請する者を意味する。
「奨励取得者(プー・ダイラップ・ガーンソンサーム)」とは、本法令に基づき奨励証を取得した者を意味する。
「機械(クルアンチャック)」とは、奨励取得事業で使用しなければならない機械、及び工場建設で使用しなければならない機械に加え、構成物、設備、道具、用品及び工場として設置するプレハブ工場構造も意味する。
「委員会(カナ・カマカーン)」とは、投資奨励委員会を意味する。
「委員(カマカーン)」とは、投資奨励委員に加え、投資奨励委員長及び投資奨励副委員長も意味する。
「顧問(ティー・プルックサー)」とは、投資奨励委員会顧問を意味する。
「事務局長(レーカーティガーン)」とは、投資奨励委員会事務局長を意味する。
「事務局(サムナックガーン)」とは、投資奨励委員会事務局を意味する。
「係官(パナックガーンジャオナーティー)」とは、本法令に基づく執行のために産業大臣が任命した者を意味する。
第五条
産業大臣を本法令の主務大臣とし、本法令に基づく執行のために係官を任命する権限を付与する。

第一章

委員会、顧問及び係官

第六条
総理大臣を委員長、産業大臣を副委員長、総理大臣が任命した一〇人以下の有識者を委員とし、委員兼書記である事務局長から成り、本法令に基づく権限義務を有する投資奨励委員会を一委員会設置する。
総理大臣は他の有識者五人以下を顧問として任命することができる。
第七条
委員もしくは顧問の任期は一期二年とする。
すでに任命された委員もしくは顧問が在任中に委員もしくは顧問が任命された場合、それが増員もしくは入れ替えであっても、新たに任命された委員もしくは顧問の任期は、すでに任命されていた委員もしくは顧問の残り任期と同じとする。
退任した委員もしくは顧問は再任されることができる。
第八条
第七条第一段に基づく任期満了のほかに、委員もしくは顧問は以下の時に退任する。
(一)死亡した。
(二)辞任した。
(三)総理大臣が解任した。
(四)破産者となった。
(五)無能力者もしくは準無能力者となった。
(六)確定判決で禁固刑を受けた。ただし軽犯罪もしくは過失罪の場合はその限りではない。
委員もしくは顧問が第一段に基づき退任した時、総理大臣は別の者を代わりの委員もしくは顧問に任命することができる。
第九条
委員長が委員会会議の招集者となる。
委員会会議は全委員数の半数以上の出席をもって成立する。
委員長を会議の議長とする。委員長が会議に出席できない場合は副委員長が議長となる。副委員長も出席できない場合は、会議に出席した委員が一人の委員を議長に互選する。
会議の決定は多数決による。
委員一人は一票を有し、票数が同数の場合は議長が決定票を投じる。
第一〇条
委員長が任務を遂行できない場合は、副委員長が代行する。委員長及び副委員長が任務を遂行できないときは事務局長が会議を召集し、会議で一人の委員を委員長代行に選出する。
第一一条
委員会は本法令に基づくいずれかの任務遂行を事務局に代行させる、もしくは小委員会を任命し代行させる、あるいは関係者を招致し事実関係、説明、助言または意見を述べさせる権限を有する。
第九条を小委員会の会議にも準用する。
事務局もしくは小委員会が第一段に基づく行為をなした時、委員会に報告しなければならない。
第一二条
委員、顧問及び小委員会委員は内閣が定めた報酬を得る。
第一三条
事務局は公務員の監督者であり、産業大臣の直轄下に公務執行に責任を有する事務局長、及びその補佐役である副事務局長を擁し、さらに事務局長補佐を置くこともできる。
事務局長、副事務局長、事務局長補は一般文民公務員とする。
事務局は以下の権限及び義務を有する。
(一)委員会の決定、もしくは委員会の委任に基づく遂行。
(二)投資環境についての広報、及び国の経済、社会、安全保障にとって重要で有益な事業への投資誘致。
(三)投資認可及び投資に係る諸サービス提供のための投資に関心ある者及び投資家に対する投資サービスセンターの設置。サービスには投資プロジェクト準備、合弁相手先探し、手続における便宜供与、支援も含む。
(四)投資奨励申請プロジェクトの分析、奨励プロジェクトの調査、統制、投資結果評価。
(五)投資における学術研究、投資適性報告作成、及び投資奨励計画策定。
(六)王国内の投資に係るデータの研究及び収集。
(七)本法令の目的に従ったその他の任務遂行。
第一四条
奨励申請者もしくは奨励取得者の事業に係る事実関係の聴取のため、もしくは書類またはいずれかの物品を調査するために、係官は必要に応じて奨励申請者及び奨励取得者の場所に業務時間中に立ち入り、その場所にいる者に対して事情聴取、調査する権限を有する。
係官が第一段に基づき立ち入る場合、緊急でないときは、相当の期間前もって奨励申請者もしくは奨励取得者に文面で通知しておかなければならない。
第一五条
第一四条に基づく公務執行において係官は身分証明書を関係者に提示する。

第二章

奨励の申請及び付与

第一六条
委員会が投資奨励できる事業は、国の経済、社会、安全保障にとって重要で利益となる事業、外国輸出のための製造事業、高い比率で資本、労働力またはサービスを使用する事業、あるいは農産品、天然資源を原料として使用する事業で、委員会が王国内に存在しない事業である、もしくは存在していても十分でない、または旧式の製造工程であると判断した事業でなければならない。
委員会は投資奨励事業の種類及び規模を布告規定する。このとき奨励付与における条件を定めることも、当該条件をいずれかの時点で改定増補または廃止することもできる。
第二段に基づき投資奨励することを布告した事業が、後に投資奨励する必要性がなくなったと判断した場合、委員会はその事業への投資奨励を一時的にもしくは永久的に停止することを布告することができる。
第一七条
奨励取得者となることを希望する者は、奨励申請投資プロジェクトと共に、事務局長が定めた原則、方法及び書式に従って事務局に投資奨励申請書を提出しなければならない。
奨励取得者は法律に従い設立された会社、財団、もしくは組合でなければならない。
第二段に基づく会社、財団もしくは組合の設立前の奨励申請は、事務局長が定めた原則、方法及び書式に従いこれをなす。
第一八条
委員会が奨励する投資プロジェクトは、経済上及び技術上の適性がある投資プロジェクトでなければならない。ここに以下について検討する。
(一)王国内の既存事業の製造業者数と生産能力、奨励によって生じる、または増加する生産能力と需要量との比較。
(二)その事業による王国内で製造もしくは組立ができる製品または生産物の市場拡大のチャンス、及び王国内での製造もしくは組立への支援。
(三)資源、資本、原料または必要な材、及び王国内にすでにある労働力もしくはその他サービスの使用量及び使用比率。
(四)節約または保全できる外貨量、及び王国内に持ち込む外貨量。
(五)製造または組立工程の適性。
(六)委員会が必要かつ相当と判断したその他の原則。
第一九条
民衆の生活に資するため、及び人と自然の豊穣継承のために、委員会が奨励する投資プロジェクトは、環境の質に損害を及ぼさないよう防止、制御する望ましい標準を有していなければならない。
第二〇条
いずれかの奨励申請者に奨励を付与することが相当と判断した場合、委員会は特定の件で、あるいは以下の諸件で奨励取得者が遂行しなければならないようするため、奨励証に条件を定めることができる。
(一)資本額及び資本の出所。
(二)株主の国籍と数。
(三)製品、生産物もしくはサービス提供の種類、製造・組立工程及び製造・組立能力を含む事業規模。
(四)使用しなければならない国内原料の量。
(五)労働者、技術者及び専門家の国籍と数。
(六)業務遂行における訓練と労働力使用。
(七)環境の質に損害を及ぼさないようにする防止と制御。
(八)奨励を受けたプロジェクトに基づき作業開始しなければならない期間。
(九)機械を注文購入しなければならない期間。
(一〇)王国内に機械を輸入しなければならない期間。
(一一)王国内に輸入した機械を作業終了後に輸出しなければならない期間。
(一二)(八)(九)(一〇)もしくは(一一)に基づく期間の延長。
(一三)操業開始日。
(一四)プロジェクトに基づく作業及び業務遂行結果の報告。
(一五)外国人技術者及び専門家によるタイ人に対する訓練で知識経験がどれだけ移入できたか、その結果報告。
(一六)製造、組立または輸出する製品もしくは生産物について委員会または当局が定めた標準に従わせる規定。
(一七)製造、組立、サービス提供する製品または生産物の販売。
(一八)製造、組立する製品または生産物の輸出。
(一九)委員会が定めた条件の遵守を保証するための金銭、銀行の保証契約書、タイ政府証券または委員会が相当と認めたその他の担保の事務局への預託。
(二〇)係官への便宜供与、本法令に基づく優遇策の供与、使用または管理に係るその他の件。
第二一条
委員会がいずれかの奨励申請者に奨励付与を決定した時、事務局は委員会が決定した日から一五日以内に、委員会が定めた条件と共に、委員会の決定を奨励申請者に文面で通知しなければならない。
奨励申請者が第一段に基づく奨励を容認すれば、通知書を受け取った日から一ヶ月以内に事務局に文面で返答、通知する。
相当の事由がある場合、事務局長は第二段に基づく期間を一回につき一ヶ月以内、かつ三回を超えない範囲で延長する権限を有する。
第二二条
第二一条に基づき奨励受け入れを返答した奨励申請者は、奨励受け入れの返答日から六ヶ月以内に、事務局長が定めた書式及び方法に従い、奨励を受けたプロジェクトに基づく作業開始結果を事務局に報告しなければならない。
相当の事由がある場合、事務局長は第一段に基づく期間を一回につき四ヶ月以内、かつ三回を超えない範囲で延長する権限を有し、その回ごとに委員会に報告する。
事務局長が奨励申請者が奨励を受けたプロジェクトに基づき操業できると検討、判断した時、遅滞なくその者に奨励証を発行する。
第二三条
奨励証は委員会が定めた書式に従う。
事務局長が奨励証への署名人になる。
奨励証の改定は委員会の決定によりこれをなし、事務局長が改定された奨励証へ署名し、遅滞なく奨励を受けた者に引き渡す。
第三章
権利と利益(優遇策)
第二四条
本法令により別段の規定がない限りにおいて移民法の規定下に、委員会は投資調査もしくは投資に益するその他の行為のために外国人が王国に入国することを許可する権限を有する。このとき委員会が検討の上、相当と判断した入国期間を定める。
許可申請は委員会が定めた原則、方法及び書式に従い、許可にあたって委員会は検討の上、相当と判断した条件を定めることができる。
第二五条
本法令により別段の規定がない限りにおいて移民法の規定下に、奨励取得者は以下の外国人を伴うことが許可される。
(一)技術者。
(二)専門家。
(三)(一)及び(二)に基づく者の配偶者及び被扶養者。
以上の者の王国内入国が許可される数及び期間は、たとえそれが移民法で規定された数及び期間を超過していたとしても、委員会が相当と判断したところに従う。
第二六条
本法令により別段の規定がない限りにおいて、外国人就労法の規定下に、第二四条に基づき許可を得た外国人、及び第二五条に基づき入国許可を得た技術者もしくは専門家である外国人は、入国許可期間にわたって委員会が承認した職位に限定して就労が許可される。
第二七条
認可された奨励取得者は、他の法律における規定を超えていても、投資奨励を受けた事業を営むために委員会が相当と判断した面積に基づき土地の所有権を保有する。
土地法典に基づく外国人である奨励取得者が奨励事業を中止する、もしくはその事業を他者に譲渡する場合、その奨励取得者は所有権保有の許可を受けた土地を事業中止または譲渡の日から一年以内に販売しなければならない。そうでない場合は土地局長が土地法典に基づきその土地を販売する権限を有する。
第二八条
奨励取得者は委員会が承認したところに基づき機械輸入税の免除を受ける。ただしその機械は、外国で生産されている種類と近似した品質を有し、かつ調達使用に十分な量において王国内で生産または組立されている機械であってはならない。
第二九条
いずれかの事業または奨励申請者が第二八条に基づく特典を得るにふさわしくないと判断した時、委員会はその事業または奨励申請者及び以後のケースに対し、機械輸入税の減免を半分に、あるいはまったく機械輸入税の免除を与えずに奨励することもできる。
第三〇条
相当の事由がある場合、委員会は奨励取得者に対し、奨励取得事業において製造、混合または組立のために王国に輸入する原料または必要資材について通常レートの九〇%を超えない輸入税減免を付与する。ただし一回につき委員会が定めた日から一年以内の期限を有する。このときその原料または必要資材は、外国で生産されている種類と近似した品質を有し、かつ調達使用に十分な量において王国内で生産または組立されている物であって はならない。
ここに委員会が定めた種類、量、期間、要件及び方法に従う。
第三一条
奨励取得者は、委員会が布告規定したところに基づき、奨励取得事業により得た純利益に対しての法人所得税免除を受ける。ここにその事業から所得を得た初日から八年間以内とし、地代と回転資金を除く投資金の割合として検討規定する。
委員会が布告規定したところに基づく国にとって特別に重要で利益になる事業である場合、その事業により所得を得た初日から八年以内の範囲で委員会が定めた期間、当該事業の奨励取得者は奨励事業から得た純利益に対する法人所得税の免除を受ける。
第一段もしくは第二段に基づく事業より得た純利益の計算に用いる収入には、委員会が相当と判断したところに基づき、副産物の販売から得た収入及び半製品の販売から得た収入も含める。
第一段もしくは第二段に基づく法人所得税免除期間に損失があった場合、委員会は奨励取得者がその期間中に生じた年次損失を法人所得税免除期間後に生じた純利益から控除することを許可することができる。このとき控除期間は免除期間末日の翌日から五年を超えず、いずれかの年の純利益から控除することも、複数年にわたり純利益から控除することもできる。
第一段に基づく投資金の計算は委員会が布告規定した原則及び方法に従う。
第三二条
委員会がいずれかの事業またはいずれかの奨励申請者への奨励付与で第三一条に基づく法人所得税の免除は相当でないと判断した場合、委員会は法人所得税免除なしでその事業もしくは奨励申請者に奨励を付与することもできる。
第三三条
委員会から承認を得た契約に基づく奨励取得者からの暖簾代、特許権料もしくはその他の権利料は所得税課税計算に含めなくともよい。このとき奨励を受けた事業から奨励取得者が収入を得た初日から五年間とし、委員会が定めた原則及び方法に従う。
第三四条
第三一条に基づき法人所得税の免除を受けた投資奨励事業からの配当金は、奨励取得者が法人所得税免除を受ける期間中、所得税課税計算に含めなくともよい。
第三五条
いずれかの地方もしくは地区における投資を奨励するために、委員会は官報告示によってその地方または地区を投資奨励区域に定めることができる。
本章に基づく特典のほかに、委員会は第一段に基づき定められた地方もしくは地区で投資奨励を受けた事業を営む奨励取得者に対し以下のいずれかの、あるいは複数の特典を付与する権限を有する。
(一)投資から得られる純利益について法人所得税の通常レートの五〇%の減免。このとき第三一条第一段もしくは第二段に基づく期間の終了日から数え五年以内、あるいは奨励取得者が法人所得税免除を受けていなかった場合は奨励事業により収入を得た初日から数え五年以内とする。
(二)法人所得税計算のために奨励取得者が奨励事業における費用として支払った金額の二倍で輸送費、電力料金及び水道料金を計上することの認可。ここに委員会が定めた要件、方法及び期間に従う。
(三)投資奨励取得者が奨励事業において委員会が定めた原則に基づき利便施設を設置または建設した際の金額を投資金の二五%を超えない範囲で全純利益から控除することの認可。ここに奨励取得者は投資収入発生日から一〇年以内であれば単年度または複数年度の純利益から控除することを選択することができる。この場合、通常の減価償却費控除を超えて控除できる。
第三六条
輸出奨励のために、委員会は奨励取得者に対し以下のいずれかの、もしくは複数の特典を付与することができる。
(一)輸出向け製品または生産物の製造、混合または組立で使用するために外国から輸入しなければならない原料または必要資材の輸入税の免除。
(二)再輸出のために奨励取得者が輸入した物に対する輸入税の免除。
(三)奨励取得者が製造または組立した製品または生産物に対する輸出税の免除。
(四)国際保険及び輸送料を含まない(FOB価格で)、奨励取得者が製造または組立した製品または生産物の輸出により前年より増加した収入の五%と同じ額を法人所得税課税評価から所得控除する。
ここに委員会が定めた要件、方法及び期間に従う。
第三七条
王国外に本居住地を有する奨励取得者もしくは奨励事業への投資者は、その金銭が以下の時、王国外への外貨での持ち出し、もしくは送金が認可される。
(一)奨励取得者が王国内に持ち込んだ資金、及びその資金の果実またはその他の利得である金銭。
(二)委員会が承認した契約に基づき奨励取得者が奨励事業への投資のために持ち込んだ国外借入金とその利息。
(三)投資奨励事業における権利及び諸サービス利用に係る委員会が承認した契約に基づき、奨励取得者が国外に拘束義務を有する金銭。
いずれかの期間において国の支払い収支が困難な状況にあり、外貨を保全し相当額を準備しなければならない場合、タイ国銀行は一時的に資金の国内外へのフローを制限することができる。ただしその資金が持ち込まれた時から二年が過ぎた後の送金であれば、持ち込まれた資金の一年につき二〇%以下の送金は制限せず、持ち込まれた資金の一年につき一五%以下の果実の送金も制限しない。
第四章
機械、原料及び必要資材
第三八条
王国内に輸入される本法令に基づき輸入税免除または減免を受ける対象となる機械、原料、必要資材について、委員会は税関局に対し、第二一条に基づき奨励を受ける返答をした奨励申請者または奨励取得者に引き渡すよう命じる権限を有する。このとき保証金の代わりにタイ国内の商業銀行の保証書を輸入税支払いの保証とすることができる。
第三九条
奨励取得者が奨励証で規定されたところに基づく機械輸入に係る要件、もしくは機械輸入税免除または減免に係る要件に従うことができない場合、委員会がその要件の変更に相当の事由があると判断した時、委員会はその要件を変更する権限を有し、関税法により合法的にその機械が輸入されていれば、委員会はその要件変更が輸入日に遡って効力を有するものと定めることができる。ここに、その輸入が本法令の施行日前、中、後に生じたかどうかを問わない。
第四〇条
五年以上、一五年以下の委員会が定めた期間内に奨励取得者が以下の行為をなすことを禁じる。
(一)奨励取得者が輸入税免除または減免を受けた機械を奨励事業以外の目的で使用する、あるいはその機械を他者が使用することに承諾する。
(二)工場もしくは事業地を移し、奨励証で規定された場所以外の場所に設置または営業する。
ここに、第四一条に基づき委員会から許可を得た場合を除く。
第四一条
委員会は、奨励取得者が第二八条または第二九条に基づき輸入税免除または減免を受けた機械を抵当権設定する、販売する、譲渡する、貸し出す、他の目的で使用する、もしくは他者に使用させる、あるいは工場または事業地を別の場所に移すことを許可する権限を有する。
許可は文面で、または奨励証の改定によりこれをなす。このとき許可における要件及び詳細を示すことができる。
本章に基づき委員会から許可を受けた奨励取得者に関税タリフ法を適用することを禁じる。ただし委員会による別段の規定がある場合はその限りではなく、この場合相反矛盾しない限り関税タリフ法を適用する。
第四二条
奨励取得者が輸入税の免除または減免を受けた機械に抵当権を設定し、委員会が第四〇条に基づき定めた期間の満了前に奨励取得者でない抵当権者がその機械の抵当権を行使する場合、抵当権者に対し関税タリフ法を適用する。このとき譲受日にその機械の輸入税免除または減免の権利はなくなったものとみなす。
第五章
保障及び保護
第四三条
国は奨励取得者の事業を国のものに移管しない。
第四四条
国は奨励取得者と競合する事業を新たに営まない。
第四五条
国は奨励取得者が製造または組立することができるものと同種の、もしくは近似の製品または生産物を独占、販売しない。
第四六条
国は投資奨励事業による製品または生産物の販売価格を統制しない。ただし国の経済、社会、安全保障上の必要があるときはその限りではないが、その場合でも委員会が相当と判断した価格を下回る販売価格は定めない。
第四七条
奨励取得者は投資奨励事業による製品または生産物をいつでも輸出する許可を得ることができる。ただし国の経済、社会、安全保障上の必要があるときはその限りではない。
第四八条
国は、奨励取得者が製造または組立している、品質が近似し、かつ調達利用に十分な量を有する製品または生産物と同一の種類と委員会が判断した製品または生産物を公官庁、政府機関、もしくは国営企業が輸入税免除を受けて輸入することを許可しない。
第四九条
奨励取得者の事業を保護するために必要な場合、委員会は奨励取得者が製造または組立している物と同一種類、近似した、あるいは代替できる製品または生産物の輸入に相当のレートで特別手数料を規定する権限を有する。ただしその製品または生産物の国外保険料 及び輸送料を含む価格の五〇%以下とする。
第一段に基づく特別手数料規定は官報に告示し、委員会が定めた期間に従い施行する。このとき期間は官報告示日の翌日から一年を超えないものとする。
委員会は本条に基づく布告を、相当と判断したところに従い、いつでも官報で告示し、改定増補または廃止する権限を有する。
王国内に輸入される製品または生産物が委員会の布告に基づき特別手数料を支払うべきかどうかで問題がある場合、委員会が検討判断する権限を有し、委員会の決定は最終的なものとする。
本条に基づく輸入に対する特別手数料の徴収は、税関局の権限義務とし、関税法を準用 する。このとき輸入に対する特別手数料は関税タリフ法に基づく輸入税であるものとみなす。
委員会がその製品または生産物に対し特別手数料を支払わなくてもよいと判断したにもかかわらず、いずれかの者がその特別手数料を支払った場合、税関局は当該手数料をその者に返還する。
第五〇条
委員会が第四九条に基づく特別手数料だけでは奨励取得者の事業保護に十分でないと判断した場合、商業省は商品輸出入統制法に基づき、奨励取得者が製造または組立している物と同一種類の、または近似した、あるいは代替できる製品または生産物を王国内に輸入することを禁じる。
第五一条
奨励取得者が奨励事業の運営で問題または障害が生じ、委員会に支援を要請した場合、委員長は相当の支援を命じる、あるいは関係する官公庁、政府機関または国営企業に遅滞なく支援するよう命じる権限を有する。
第五二条
租税、サービス料または手数料徴収の構造、レートもしくは方法が奨励する投資、あるいはすでに奨励している投資の障害になっている場合、委員会への支援要請のあるなしに関わらず、委員長は関係する官公庁、政府機関または国営企業に解決を命じる権限を有する。
第五三条
第五一条または第五二条に基づく委員長の命令を受けた官公庁、政府機関または国営企業は、当該命令に従い支援もしくは解決を検討しなければならない。命令に従うことができないと判断したときは、命令を受けた日から一五日以内にその事由とともに委員長に報告する。
第一段に基づく事由と報告を受け取った場合、委員長が検討の上、実施できると判断したときは、その決定は最終的なものとし、関係する官公庁、政府機関または国営企業は遅滞なくその決定に従う。
第六章
特典の取消
第五四条
奨励取得者が委員会の定めた要件に違反した、もしくは従わなかった場合、委員会は奨励取得者に対する特典を全部または一部取り消すよう命じる権限を有する。このとき期間を定めても、定めなくともよい。
委員会が奨励取得者の要件への違反、不遵守が意図的なものではないと判断すれば、定められた期間内での解決または遵守を奨励取得者に文面で督促するよう事務局に対し命じることができる。ただしその期間が経過しても、奨励取得者が相当の事由なく解決または遵守していない場合、委員会は第一段に基づく手続きをなす。
第五五条
委員会が輸出入品に対する租税に係る特典の全ての取消を命じた場合、奨励取得者は初めから租税免除または減免を受けていなかったものとみなし、奨励取得者は輸出入日の価格及び税率を税額計算の基準として納税する。税の減免を受けていた場合は同様の基準で計算し、すでに納税した分に加えて全額納税する。
委員会が輸出入品の一部について租税に係る特典の取消を命じた場合、奨励取得者は自己が引き続き受けられる特典のみ初めから税の免除または減免を受けたものとみなし、輸出入日の価格及び税率を税額計算の基準として特典を取り消された分の租税を納税する。
奨励取得者は租税に係る特典の取消命令を知った日から一ヶ月以内に税関局もしくは輸出入地の税関書に通知し、租税または増税分の納税申請をしなければならなず、納税しなければならない租税もしくは増税分の金額の通知を受けた日から一ヶ月以内に税関局が定めた税関事務所で納税しなければならない。奨励取得者で当該期間内に租税もしくは増税分を通知または納税しなかった者は、通知または納税期限が切れた日から税額または増税分を支払うまで、納税しなければならない税額の月一%の比率で割増金を支払う。このとき複利で計算しない。支払いは当該通知または納税期限が切れてから三ヶ月以内でなければならない。支払いがなされないときは、納税回避により輸出入された物品であるとみなし、関税法を適用する。当該割増金の計算で月の端数がある場合は一月と計算する。
奨励取得者が第五四条第二段に基づく事務局の督促に従わなかった場合、委員会は奨励取得者に対し国に割増金、租税を納めさせる。このとき奨励取得者は第三段に基づき収めなければならない税額または増税額とともに、第五四条第二段に基づく期限が切れた日から納税しなければならない税額の月一%の比率で割増金を税関局に収める。ただし本条に基づく割増金は増税額を超えてはならず、割増金は関税法に基づく税額と同じとみなす。
訴訟手続に資するため、本条に基づく時効の計算は命令を知った日から一ヶ月が経過した時を始点とする。
第五五/一条
委員会が法人所得税に係る特典の取消を命じた場合、奨励取得者はその特典取消を受けた会計期において法人所得税免除または減免を受ける権利を失ったものとみなし、国税法典を適用する。
委員会は奨励取得者が委員会の定めた要件に違反した、もしくは従わなかった会計期に遡及して法人所得税に係る特典の取消を命じることができる。この場合、奨励取得者は国税局、税務署または奨励取得者の本店がある県国税事務所に免除または減免を受けた税の通知及び納税申請をし、その特典取消命令を知った日から一ヶ月以内に当該場所で納税しなければならない。このとき免除または減免を受けた会計期の税率を計算の基準とする。
奨励取得者が当該期間内に租税もしくは増税分を通知、納めなかったとき、通知及び納税期限が切れた日から税額または増税分及び割増金を納めるまで、国税法典に基づく割増金を支払う。支払わなかった場合は国税法典を適用する。
第二段に基づく法人所得税に係る特典の取消命令は、委員会が取消を命じた日より前に支払った投資奨励事業からの配当金には影響を及ぼさない。
第五六条
奨励取得者が事業を取りやめた、他者と事業合併した、あるいは他者に事業を譲渡した場合、その奨励証は事業を取りやめた、合併した、あるいは譲渡した日から三ヶ月までは使用できる。
新たに合同事業者となった者、もしくは事業を譲り受けた者が奨励証に定められた要件に従い奨励を引き継ぎたい場合、第一段に規定された期間内に奨励申請書を提出する。委員会が奨励が相当と判断したときは元の奨励取得者への残りの奨励措置についてのみ本法令に基づく特典が受けられる奨励証を発行する。委員会が奨励に相当しないと判断したときは全ての特典を取り消すよう命じる。
第七章
経過規定
(省略)
(おわり)